都政リポート(2号)
都議会事情通がみる新しい都政・都議会の展望
特別委員会ってなに
特別委員会ってなぜ作るの 〜知事与党と野党の思惑が衝突〜
8月1日の創刊号執筆段階では、20期当初では特別委員会が設置されないとの情報を前提として、常任委員会人事について取り上げたが、オリンピック・パラリンピックに関する特別委員会が設置される合意がなされた。
これを受け、では何故、豊洲問題に関する特別委員会は設置されないのか、との疑問が寄せられたので、特別委員会設置の思惑などについて、私なりの理解を記したい。
そもそも特別委員会とは
地方議会は地方自治法を基本として運営されています。
地方自治法上では、地方議会の特別委員会として、100条に基づく特別委員会と109条に基づく特別委員会が規定されています。
前者については、ご案内の通り、百条委員会と言われ、通常の委員会には与えられていない強い調査権限が付与され、強制力を持った資料の開示請求や証人尋問、さらには偽証の認定を行うこともできます。
一方、後者について、法109条第一項には「普通地方公共団体の議会は、条例で、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会を置くことができる」、第四項には「特別委員会は、議会の議決により付議された事件を審査する」とのみ規定されています。
実質的には、通常の常任委員会での所管局を超える案件※や当該自治体における重要な政策課題を集中審議するために設置されています。
(※ 所管局を超える案件を常任委員会等で扱う場合、複数の常任委員会が連合して審査する、連合審査会という手法をとることもある。)
議会ではどのような思惑で、特別委員会を設置するのか
都議会では過去、
「オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員会」、
「豊洲市場移転問題特別委員会」、
「防災対策特別委員会」、
「株式会社新銀行東京に関する特別委員会」、
「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」など
が設置されてきました。
いずれも、その時々の都政における重要課題です。
しかし、重要課題であればあるこそ、党派間での賛否やスタンス、思惑が交錯します。
政策改題への対応について与野党の思惑が一致する場合、或いは世論的に反対しづらい(百条委員会など)場合には、全会一致で設置されます。
しかし、思惑が一致しない場合、つまり、知事などにとってあまり追及されたくない案件の場合、知事野党は設置を求め、与党はこれを拒む傾向があります。
まれに知事とのスタンスに関わりなく、議論の場は作るべきだと一般社会の常識に基づいて設置を求める会派も存在します。
(過去の事例)
極端な事例では、8年前、都議会民主党が都議会第一会派になったとき、臨時議会にむけて「株式会社新銀行東京に関する特別委員会」、「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」の設置を提案したとき、知事与党であった都議会自民党はこれに徹底抗戦し、平成21年8月10日臨時議会が流会になるという事態にまで至りました。臨時議会は8月31日に議長人事や常任委員会人事等だけ決め閉会。9月に入り、定例都議会の最終日、9月25日に漸く特別委員会の設置にまで漕ぎ着けました。
当時、都議会民主党は共産党等とかろうじて過半数を得ていたにもかかわらずです。
(何故オリンピック等はOK、豊洲はNO)
今回、20期のスタートに当たり、オリンピック・パラリンピックに関する特別委員会の設置が合意されたのは、今後、費用負担の問題や施設整備が間に合うのかといった課題はあるものの、大会成功に向けての課題整理であり、知事にとっては大きな政治問題にはならない故であると考えます。
一方、豊洲市場問題は、市場問題PTも近々に第2次報告書をまとめ終結し、あとは知事の判断になる。知事は「豊洲も築地も」との方針を都議選前に急遽示したものの、具体策については未だはっきりしない。一旦豊洲に移転とはいっても、どの程度の追加対策を講じるのか決めていないなかで、仲卸業者の理解を得るのは至難の業である。
PTが言っているように法律的・科学的には安全として、対策を講じなければ、何故ここまで引っ張ってきたのか、また対策を講じたとしても、その必要性の根拠を自民党は指摘してくる。
また、対策を講じないのは論外だが、講じたとしても不十分だと共産党は指摘する。また築地の未来についても意見が分かれる。
不確定要素が多すぎる豊洲問題について、特別委員会という議論の場を増やすことは、得策では無いと知事与党であれば当然考えることです。知事が直接、設置見送りを求めることはないと思いますが、与党としてはそこを思慮する(最近では忖度ともいいますが)ことになる。
(都民ファーストの会はどう説明する)
以後は、「都政リポート」のページで