都政リポート(3号)
都議会事情通がみる新しい都政・都議会の展望
豊洲市場関連補正予算案審議 &「各種団体予算要望ヒアリング」の考察
8月28日より、異例の都議会臨時会が行われている。臨時議会の招集目的は周知の通り、豊洲市場関連の補正予算約55億円である。
都議選直前に知事は「築地は守る。豊洲はいかす。」との方針を発表した。しかし具体的なスケジュールや対策が見えてこない中での補正予算案の提案。知事は一日も早く対策を講じていくためとしているが、数週間後に定例会が控えている中での招集は腑に落ちないと感じている方も多いと思います。
選挙前の数ヶ月間、選挙準備も顧みず、豊洲問題に時間を割いてきた者の一人として、都民・市場関係者が納得する移転対策を講じて欲しいと切に願っています。
その意味からも、臨時議会の思惑、豊洲問題のポイント、そして延び延びになっていた各種団体予算要望ヒアリングについても今号の中で解説していきます。
(用語豆知識:地方議会の議員を集めるときは招集、国会議員を集めるときは召集を使う。)
議会の招集権者は知事、しかし会期を決めるのは議会
長丁場となった臨時議会は結果として都民ファーストの会にとっても利点大
(議会の招集)
意外とご存じない方が多いと思いますが、普通地方公共団体の議会の招集権者は議長では無く、知事や市長等、地方公共団体の長にあります。
これは地方自治法第101条に規定されており、2項以下、議会の側から臨時会の招集を請求することができる権利が規定されていますが、あくまでも第一義的には首長が召集することになっています。
当然、現在開会中の都議会臨時会も知事の招集よって行われています。しかし、どれだけの期間審議を行うか、つまり会期は議会の議決によって定めることになっています。
(長丁場の臨時議会)
さて臨時議会は1日、せいぜい長くても2〜3日の会期で閉じるのが通例ですが、今回は異例の9日間という長丁場になったこと、水面下で与野党の熾烈な駆け引きの末だと思いますが、結果として知事与党である都民ファーストの会にとって十分な審議時間を確保したことは、議論封じという批判を受けずに済んだ以上の,メリットがあったと思っています。
都議会定例会が1か月以内に予定されているにもかかわらず、臨時議会を開く意味は、「1日も早く豊洲の対策を進める」との主張にうそは無いと思いますが、それ以上に知事サイドは審議時間を与えたくないとみる向きも多いと思います。
私が知事の立場であれば、当然2〜3日の審議で終わらせたいと考えます。9日間も日程を取られたら、議会サイドは何をしているのかと怒り心頭になります。噂はちらほら聞こえてきますが、知事がどう考えているかは定かではありません。
いずれにしても、十分な審議日程を確保し、議論されている補正予算案、長くこの問題にかかわってきた私の思いは以下の通りです。
(審議で明らかにして欲しいこと)
○専門家会議で示された、地下ピットの対策工事の有効性をどのように評価し、管理していくのか。
石原知事時代の専門家会議のメンバーとほぼ同じメンバーで議論された対策案、当時、日本の最高技術を集めたとの趣旨の発言をしていたが、実際には盛り土も変更、地下水対策も完璧では無かった。同じ轍を踏まない対策が求められる。
○一番の難題は市場関係者の理解を如何に得ていくのか。
知事が昨年秋、移転を延期した決断は都政の大きな闇を白日下にさらし、都政を変えるきっかけとなった。
しかし、5年後に築地も活かすと言われても、豊洲の現状は何もかわらず、対策工事も地下ピットをコンクリートで固めるだけ、地下水管理システムによって将来的には無害化も可能といわれても現状は、汚染物質を封じ込めるだけで、地下水管理システムの機能強化について補正予算には盛り込まれているが不明確な点が多い。地下ピットを作った目的は万が一の時の追加対策が講じられるようにと説明されたが、地下を掘り返すわけでも無く、地下ピットを作った理由も成就されない。
以上のような状況で、市場関係者の理解を得るのは至難の業と言わざるを得ない。一生懸命話せば分かってもらえるという問題では無い。市場関係者の事業継続を担保するため、風評対策も含めて都がどう向き合っていくのか。一度失った信頼を取り戻すのは容易ではない。過去の責任を負わされている現在の市場当局は哀れでならないが、是非とも知事を先頭に真摯な対応をして欲しいと願ってやまない。
○審議のあり方について〜蛇足〜
補正予算案の審議の中では、築地の活用の問題や豊洲市場内でカビが発生している問題、さらには千客万来施設の問題など様々な観点からの質疑が行われているようだが、一点気になるのは千客万来施設の事業者撤退や損害賠償請求云々について都民ファーストの会の一期生が法律論を展開していることである。
法律論的にはその通りと思うが、それは今、議会で披瀝することでは無い。実際に都が損害賠償請求されたときに、司法の場で反証するべき事であるし、議会としては、訴訟になった時に都の姿勢を質すときに展開する議論であると思う。政治家として、今なすべき事は、都に協力をしようとしていた事業者を法律論で論破することでは無く、当初の予定通り事業進出してもらえるような環境を整備していくことにある。
知事与党であればなおさら。知事にとって何の援護射撃にもならない愚論を呈している場合では無いことを自覚し、政治家としての在り方を勉強してほしいものである。
(自民党も補正予算案に賛成)
本日、経済港湾委員会での採決で「築地は守る。豊洲は生かす。」とした補正予算案に自民党も賛成した。
とにかく安全だからといって豊洲への移転を求めていた以上、予算案に反対する道理はない。
しかしその一方で、科学的に安全としていたものに追加対策工事費や地下水管理システムへの追加予算を支出することに同意する理由はどこにあるのか、さらに自民党は将来的に築地を市場として活用する意思が無いにもかかわらず、築地の再開発に向けた検討費が計上されている補正予算案に賛成する理屈をどのように展開するのか。明日の本会議での討論に注目したい。
各種団体予算要望ヒアリング
例年、9月第1週を挟む前後の期間、都議会各会派では各種団体からの予算要望ヒアリングを行ってきた。
今年は、例年と異なり、都民ファーストの会が知事与党として7月下旬からヒアリングを行うという異例の対応を取り、公明党もこれに追随した。
都民ファーストの会は、本来次年度予算案は8月頃から各局で調整が始まるのだから、それに間に合わせるために繰り上げたと説明している。
それも一つの見解だとは思うが、自民党を出し抜き、各種団体に踏み絵を踏ませるためと考えるが政治の常識だと思う。
以後は、「都政リポート」のページで