2017年まで都議会における政策

政策・課題 Policy Problem

このページは、都議会議員時代に酒井大史が取り組んでいた政策や関心を持っていた課題です。
私の思いは些かも変わりませんので、引き続き掲載させていただきながら、ヴァージョンアップさせていければと考えています。

都民の生命を守り、寄り添う施策を 犯罪被害者支援・児童虐待防止

犯罪抑止の政策実現に向けて

 都内における殺人、強盗、強姦、傷害などのいわゆる刑法犯の認知件数は、平成27年で148千余件と年々減少傾向にあり、警視庁の犯罪抑止対策は、一定の成果を上げていると考えます。平成29年第一回都議会定例会に提案された「特定異性接客営業等の規制に関する条例」など新設の条例も整備し、犯罪の被害者を作らない対策も講じています。
しかし、殺人(102件)、強盗(399件)、強姦(179件)、傷害(3,204件)と一定数の犯罪は発生しており、犯罪の被害を受け苦しんでいる被害者やその家族は日に日に増えています。
ちなみに立川市内における平成28年12月末現在の刑法犯発生件数は、2,186件と4年前に比べ900件近く減少しておりますが、凶悪犯は6件、粗暴犯は112件発生しています。故に、国においても,地方自治体においても犯罪被害者支援は重要な施策に位置づけられるべきです。

犯罪被害者支援策の向上へ

犯罪被害者支援は市議会議員時代から取り組んでいる言わばライフワークです。 過去、都に対し「被害者への2次被害の防止策」や「犯罪被害者等の人権教育の推進」などを提案し実現してきました。

 犯罪被害者支援をさらに推進し、都が被害者に寄り添う姿勢を広く示すため「東京都犯罪被害者等基本条例」を議員提案しましたが、議会、行政ともその必要性を認めて頂けず、また、1300万人を超える人口を有する東京都において「被害者支援都民センター」の「多摩支所」の必要性を求めるも実現には至っていません。

 ストーカー等による殺人や傷害事件、児童虐待、また高齢ドライバーによる死亡事故などで、命を奪われ、また身体を傷つけられた被害者、そしてその家族の方々の苦しみや悲しみを思うと胸が苦しくなります。

 都は「第3期東京都犯罪被害者等支援計画」に基づき施策を展開しました。計画初年度の28年は相談員を増員し機能強化を図ると共に、29年度は市区町村が活用できるマニュアルを作成し、担当者に対する訪問指導や研修会で活用、都民向けの広報・啓発も行っていく予定です。また小池知事も私の質問に対し「被害者の心に寄り添う支援策を着実に展開し、温かく優しさに溢れる都市の実現を目指し、全力で取り組んで行く。」と決意を述べています。
また、現在では都内全ての市区町村に相談窓口が設置されました。これら窓口の機能強化を含め、引き続き、一歩一歩、犯罪被害者に寄り添う都政、社会を構築するために活動して参ります。

 いじめや児童虐待をなくすために

 いじめによる自殺や児童虐待により幼い命が奪われるニュースを聞くたびに心が痛みます。3年前に子どもを授かってから、その思いはさらに強くなっています。東京都が平成27年に都内の2,000校以上の公立校を調査したところ、小学校1292校で1876件、中学校627校で1748件、高等学校192校で47件、疑いも含めていじめが確認されました。都も「いじめ総合対策」を実施し、確認件数、解決件数とも一定の成果をあげていますが、指導を継続している件数も相当数あり、いじめに苦しんでいる子どもを一日も早く救ってあげる必要があります。

 いじめを受けている一人一人に寄り添う対応が必要なのは言うまでもありません。
今日の教育現場における教員の多忙感・負担感には想像を絶するものがあります。また市内の小学校でも、担任の先生に問題解決能力がなく、通常では犯罪になるような被害を受けて不登校になっている子どもが放置されているという相談を受けました。そのとき被害を受けた子どもの親に対し「子ども自身が、いじめ(犯罪)をしている子どもに断る勇気も必要だ」という人がいたと聞き唖然としました。まず第一に行うべきことは「被害を受けた子どもの心の傷を癒やし、正常な生活に戻してあげること」であり、次に考えるべきことは「加害児童に悪いことをしたと自覚させ,二度と間違いをさせないよう」諭し、悪い方向に進まないよう教育していくことです。この事案は解決しましたが、大人が傍観者にならず、少しお節介でも子ども達の命を守る意識を持っていく必要があります。このような姿勢は児童虐待の早期発見にも繋がります。

 都も児童相談所の体制強化に取り組んでいますが、地域が連携し子どもの命を守る社会を作っていきたいと考えています。

 さらに被害者にも責任があるという風潮は、犯罪被害者支援の観点からも許せないものであり、意識改革を促す取り組みも行っていきたいと考えています。


都民の生命を交通対策・救急隊の整備

交通安全対策大切な人を交通事故から守る

 近年、高齢運転手による事故のニュースが絶えません。それと同時に子ども達が巻き込まれる事故も後を絶ちません。愛する人や我が子を交通事故から守るために、交通安全対策は喫緊の課題です。私も以前から、巻き込み事故を防ぐための歩車分離信号の導入促進を警視庁に依頼し、立川駅北口「曙橋」交差点などの改良も実現してきました。

 今期4年間においても、地域住民の方々から交通安全対策につながる多くのご要望をいただき、市内各所の対策を行ってきました。横断歩道の設置や交差点の信号機改良、抜け道における一時停止規制、さらには通学路のスクールゾーン規制など、一歩一歩ではありますが警視庁に依頼し実現を図ってきました。これからも命を守る取り組みを進めて参ります。
 

 救急隊の整備促進へ

 8年前の選挙時より、都内の救急搬送時間が全国平均の30分を大きく上回り約47分もかかっている現状を指摘し、都民の生命に関わる問題として,改善を求めてきました。

 これまで都は「救急医療の東京ルール」を策定、都内の医療圏域ごとに「地域救急医療センター」を整備、東京消防庁に「救急患者受入コーディネーター」を配置すると共に、平成22年から24年度にかけて救急隊を7隊増強配備しましたが、残念ながら搬送時間短縮には繋がりませんでした。

 平成25年度から28年度にかけて救急隊をさらに15隊増強した結果、平成28年度では病院到着まで約39分、引き継ぎ完了まで約47分となりました。しかし救急隊の増隊に比例して救急出動件数も増加し777,427件となっています。その一因には高齢者や救急隊を呼ぶまでもない症状の方が増加していることがあげられます。

 救急相談センターの体制強化をはじめ様々な施策を駆使して、都民の生命をしっかり守る都政実現に取り組んで参ります。

 がん対策
 都においても現在、日本人の死因の第1位となっているがん対策が重要な課題です。がん対策は基本的に予防、早期発見と適切な治療、患者本人やその家族の不安の軽減、がんに関するデータの収集や研究の推進が大きな柱となります。

平成24年7月から、東京での地域がん登録が開始されました。都民がどの地域でどのようながんに罹っているのか、性別や年齢によるがんのかかりやすさ、どのような治療を受けてどれ位の生存率か、実態に対応した対策を立てるための唯一の情報源となります。これがしっかり機能すれば、都のがん対策のエビデンスとして、二次保健医療圏ごとの傾向と対策、さらには市区町村との対策に生かせるような情報提供が期待でき、がんのハイリスク群など、特性に対応したきめ細かい対応につなげ、一人でも多くの命を救うための処方せんとなります。

前期、都内のがん対策が更に推進するよう「がん対策推進条例」を提案しましたが、反対多数により否決されてしまいました。がんについては早期発見から早期治療、そして終末期医療など様々な医療的対応と共に、がん治療と仕事との両立、治療に専念できる経済環境の維持も欠かせない課題で有り、広く事業者への理解も求めていかなくてなりません。引き続き、条例の再提案も含めがん対策の向上に向けて取り組んで参ります。
さらに受動喫煙防止条例の制定も目指していきます。

子ども施策の充実を 〜教育・子育て〜

教育機会の均等~給付型奨学金・高校無料化・さらに底上げ

 都は、平成29年度予算にて、会派として予てから要望していた、高校生に対する給付型奨学金を都立高校生に導入しました。また所得制限はあるものの私立高校生への実質授業料無償化も打ち出しました。旧民主党政権が公立高校の授業料無償化によって端緒を付けた「教育機会の格差」解消への流れが進んできています。授業料の無償化のみならず、基礎学力の習熟や高等教育への進学をサポートしきれないご家庭の子ども達を支援し「学びの機会確保」に取り組みたいと考えています。

保育環境の充実~保育士の処遇改善・賃金UP
 現在、保育園の待機児解消のため、多くの自治体が対策に取り組んでいます。東京都も保育所設置のための補助率を上げるなどの取り組みを行っていますが、ハード面での対応のみならず、保育士の確保に繋がるソフト面での対応も不可欠です。保育士の処遇改善など保育サービスの充実などを求めてきましたが、都は保育士キャリアアップ補助などの予算処置を講じ、独自に21,000円の賃金改善を行いました。また2019年度末までに保育サービス利用児童数を7万人分確保し、待機児童解消を目指しています。今後とも、保育需要に対応するべく都に施策の充実を求めていきます。
さらに、保育園に入れない保護者の不公平感を解消するため、東京版「子ども手当」の創設など、保護者ニーズも捉え、従来の発想にとらわれない対策を提案をして参ります。

教育内容の充実~リテラシーからコンピテンシーへ、生きる力・考える力を醸成

 未来への投資である教育において、格差の解消とともに取り組むべき課題が教育内容の充実です。文部科学省は、2020年度から順次導入される小中学校の学習指導要領の改定案を公表しました。小学校では「生きる力」を育てる、中学校では「解決する力」を重点としています。

 2015年にはOECD生徒の学習達成度調査(PISA調査)が行われ、「科学的リテラシー」「数学的リテラシー」「読解リテラシー」とも上位に位置しており、学力向上の取り組みの成果が出ていると言えます。今後、グローバル化が進展する社会の中で子ども達が生き抜き成功を収めるためにはリテラシーのみならず、コンピテンシーの観点も必要になってきます。2003年に最終報告が出されたOECDのDeSeCoでは、キー・コンピテンシーを3つの能力に集約し、その一つは文部科学省が取り組む「生きる力」として具現化しています。さらに「他者とうまく関わる能力・協力する能力・対立を処理し解決する能力」も必要です。教育庁も「多様性を尊重し社会に貢献しようとする意欲を育み、豊かな国際感覚を醸成する取り組みを推進していく」としています。

 今後、キー・コンピテンシーの核となる「考える力」を生涯にわたり学び得る学習環境の形成にも引き続き取り組んで参ります。

築地・豊洲市場問題〜豊洲市場移転に関する過去の解明と未来への議論〜

 都議会において10数年ぶりの100条委員会設置

 平成29年第一回都議会定例会にて「豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会」(100条委員会)が設置され、証人尋問、資料開示請求が行われています。証人尋問では、ロッキード事件当時、流行語にもなった「記憶にございません」が逃げ口上の決め台詞として使われ、なかなか真実に至らない部分もあります。その一方で、資料開示請求では、東京ガスからの資料の中から東京都が存在を明らかにしていなかった資料も提出され、都庁の闇が明らかになり、真相を解明する手がかりが見えてきました。

 私は本委員会の副委員長として、会派の仲間と共に取り組んでいます。豊洲市場用地購入の根底には、バブル期における臨海開発の赤字補填のために市場移転が利用され、その結果、市場関係者や都民にツケが回されていると私たちは見ています。そして一連の流れの中で重要な決断をしたのが石原元知事であり、歴代担当者が判断ミスを重ねたことで、瑕疵担保を免除するなど今日の課題に繋がっているというのが大筋だと考えています。

左の写真はビデオ映像をキャプチャーしたものです。

 当時、築地市場現在地再整備案を作成していた
 平成22年10月、石原元知事が豊洲移転を強引に推し進めた当時、都議会では民主党が主導し現在地再整備案を3案作成していました。大枠の考え方として、晴海を仮設用地とし、築地を一括、あるいはローリングで建て替えるもの、また晴海に転配送センサーなどを移転し築地と晴海のツインマーケット案も検討した経緯があります。今日に至っては東京オリンピック・パラリンピックの選手村になるので晴海を仮設用地にすることはできません。

 A-2案

未来へ向けて、豊洲をどう考えるか

 平成29年3月19日、東京都の専門家会議が開かれ、地下水モニタリングの再調査結果が公表されました。その内容は最大値で環境基準の100倍というベンゼンが検出されました。安全安心に繋がる土壌汚染対策は不完全であったとも考えられる結果です。専門家は地上と地下は別問題で、地上は安全と言い、最近都議会自民党は、築地市場の安全性を殊更問題視し喧伝しています。

 地上と地下は別、地下水も利用しないので地上は安全というのであるならば、なぜ何百億もの費用をかけたのか。その理由は、市場関係者が安心して安全な食べ物を消費者に提供する環境をつくることだったはずです。市場関係者が安心し、風評がないレベルの土壌汚染対策が出来るかどうかが重要です。

小池知事は豊洲市場を生かすとともに、5年後を目途に築地にも食文化の拠点として市場機能を持たせた開発を行っていく旨、大枠の方針を示しました。豊洲への移転に向けて必要な対策を講じられるか、財政の問題をクリアーできるか、しっかりとチェック機能を果たしてまいります。

多摩の振興に向けて~観光・交通インフラ~

立川市に「東京観光情報センター」開設~ハードの整備に合わせて、観光情報の集積と自治体支援を
 平成29年度予算にて、多摩地域では初となる「東京観光情報センター」が立川に整備されることになり、6月20日エキュート立川3階にオープンしました。しかし、現在配布されている「東京ハンディーガイド」には多摩地域に関する情報がほとんどありません。その改善と共に、多言語による多摩地域の情報発信を強化することを都に求め、また(外国人)観光客に分かりやすい場所を選定することも求めました。
都は地域からイベント情報などの提供を受け外国語で旅行者に伝え,観光客の誘致を的確に行い、観光資源の開発を目指す観光協会等に専門家を派遣するなど、多摩地域の自治体等を後押ししていくと答弁しています。
立川を観光拠点として、多摩地域の振興につながるルート整備など、提案してまいります。

 南武線を活用し、羽田空港へのアクセス向上を

 羽田空港と多摩地域のアクセス時間短縮を可能とするルートとして南武線の活用を提案しています。

 南武線は現在快速列車が導入されたものの、待避設備のある駅が2駅しかないため、昼間時間帯しか運行できず、所要時間の大幅な短縮も出来ない状況にあります。そこで府中市内と、川崎市内に各1駅、待避設備を設置することで立川─川崎駅間の所要時間を20分程度短縮できる可能性を紹介しました。さらに川崎市内の南武支線及び東海道貨物支線を活用し、プラス約4キロの新線を建設するだけで、南武線を羽田空港へ直接乗り入れることができ、JR中央線・青梅線・武蔵野線と連結することで、多摩地域の西部や北部と羽田空港のダイレクト・アクセスが実現、観光客のみならず地域住民の利便性の向上にも繋がることを指摘しました。

 平成27年の質問以降、南武線沿線五市(川崎、稲城、府中、国立、立川)では、協議会が発足しています。

 既存のインフラに少し手を加えるだけで大きな整備効果を生む可能性があることから、都としても沿線自治体の取り組み等をバックアップするなど、南武線の利便性向上を平成29年第一回定例会で求めました。これに対し都は、平成28年4月の交通政策審議会答申で「南武線の輸送サービスの改善について、検討を期待する」とされていることをあげ、今後鉄道事業者の動向を踏まえ、沿線住民がより快適に鉄道を利用できるよう、地元市の取り組むまちづくりを支援する」と答弁しました。今後とも、立川のみならず多摩地域の振興に繋がる施策を提案していきます。

横田基地の軍民共用化と多摩中央ハイウエイ構想

横田基地の民間利用の必要性
 世界のグローバル化が進展し特に東アジア各地に拠点となる空港が整備される中、成田や羽田空港の拡張がなされているものの日本の特に首都圏の空の交通網は世界から取り残されている状況にあります。また多摩地域の人にとっては羽田も成田も遠すぎるという声も聞こえてきます。

横田基地は立川市を始めとする5市1町にまたがる約714ha(味の素スタジアム165個分)の広大な敷地です。

あくまでも横田基地の返還を最終目的としますが、返還までは基地と民間航空と共用して活用する「軍民共用化」を目指しています。

横田基地の民間利用によって、首都圏の空港容量の拡大や、多摩地域のみならず、山梨県、埼玉県、神奈川県を含めた首都圏西部地域における経済の活性化と多様な航空需要への対応などに、大いに寄与する潜在力を持っています。
経済波及効果は
   この共用化は単に利便性が高まるといった事にとどまらず、地域の活性化に大きく寄与します。(財)統計研究会の調査によると2022年度で約560万人が利用し、経済効果は約1,610億円、雇用効果は約8,850人となっています。
また空港へのアクセスのための交通網の整備を積極的にすすめていけば地域全体の人や物の動きが活発になってきます。
さらに、横田基地が本格的に民間空港となり物流の拠点になった場合には、成田空港や羽田空港に向かうトラック等の都心通過交通の削減も期待出来ます。横田基地共用化にともなうトラック貨物輸送における環境負荷の低減について横田基地が軍民共用化され、民間航空機による航空輸送が可能になった場合、立川からのトラック輸送距離の短縮にともなう環境負荷の低減がどの程度か。
《比較検討の前提》
・横田飛行場からB767-300 1機が就航した場合の比較。(搭載可能な貨物量は約20t)
・トラック10t車2台が立川駅から、横田飛行場及び各空港に到着するまでとする。
・車両の平均速度を時速30kmとする。
・比較は、ディーゼル車の規制があるNOxとPM(粒子状物質)とする。
NOx(g)
PM(g)
10t車1台の半積載状態での1kmあたりの排出量
8.51
 0.81
立川ー横田(13km)
110.63
 10.53
立川ー羽田(53km)
451.03
 42.93
立川ー成田(106km)
902.06
 85.86
減少量(羽田と比較)
340.40
 32.40
減少量(成田と比較)
791.43
 75.33

《考察》
・横田基地の共用化により、横田勢力圏からの貨物空輸の需要が見込まれ、トラック輸送距離の短縮により、自動車排出ガスによる環境負荷の低減には一定の効果があると想定される。
・しかし、全体としての効果を定量的に表すことは、可能かどうかの検討も含めて相当な調査が必要である。
・ここでは、上記の前提条件のもと、NOxとPM(粒子状物質)の減少量を算出した。
(参考)(東京都の対策地域での数値)
・自動車排出ガスによる窒素酸化物排出量 41,000t/年(平成12年度実績)
・自動車排出ガスによる粒子状物質排出量 3,180t/年(平成12年度実績)

航空機騒音の影響の軽減方策
1.発生源対策・低騒音機の導入
航空機の騒音影響の軽減には低騒音機の導入が最も効果的であると考えられる。
近年のジェット旅客機の騒音は初期のジェット機に比べ、エンジンの性能や機体の空力特性等の技術進歩により大幅に改善されてきている。
なお、国際民間航空機関(ICAO)においては、2006年1月1日以降の新造機には現状よりも更に厳しい基準を設けており、今後は更に低騒音化が進む方向にある。・騒音軽減運航方式
騒音軽減運航方式としては表1が一般的である。
国内の民間エアライン(JAL・ANA)によると、急上昇方式およびディレイド・フラップ方式は、国内の殆どの空港で実施されている。また、低フラップ角着陸方式は、滑走路長に余裕がある空港で実施されている。

表1 騒音軽減運航方式

以上のほか、以下の運航方式も騒音軽減に寄与することが考えられる。
・スラストリバーサ使用の抑制
着陸時の減速方法として、スラストリバーサ(いわゆる逆噴射装置)が使用されることが多いが、滑走路長に十分な余裕があり安全運航に支障がない場合には、その使用を控えることにより騒音が軽減されると考えられる。
ただし、着陸滑走距離が増加するため滑走路の占有時間が長くなり、混雑時には滑走路処理能力等に影響する可能性がある。
・ 追い風離陸の抑制
追い風の下での離着陸は向い風の場合と比べ滑走距離が長くなり、騒音の影響範囲が拡がることになる。したがって騒音軽減のためには、できる限り追い風での離着陸は避けるべきである。
・運航制限
発生源対策の1つとして、発着枠の制限や、夜間の離着陸禁止などの運航制限を設けることが考えられる。
ただし、ICAOにおいては、騒音を理由とする運航制限は、最も適切と考えられる場合にのみ適用すべきであるとされており、事実上の最終手段である。
2.空港構造の改良
・ディスプレイスド・スレッショールド方式
着陸に必要な滑走路長は一般的に離陸よりも短いため、着陸時における滑走路の末端(Threshold)を内側に移設することにより進入経路下の騒音を軽減する方法が考えられる。
現在のところ、国内においては騒音軽減を目的として当該方式を実施している空港は無いが、国外の空港では比較的多く実施されている。
なお、成田空港の滑走路34Lにおいては、騒音軽減以外の理由とされているが、着陸時の滑走路末端が750m内側に移設されている(図1)。
(参考)表2 旅客機の典型的な必要滑走路長
機 種
発動機型式
離陸滑走路長
(m)
着陸滑走路長
(m)※1
備 考
B747-200B P&W JT9D-7R4G2
3,160
2,110
大型ジェット機
B747-400 GE CF6-80C2B1F
3,250
2,070
B747-400D GE CF6-80C2B1F
1,790
1,940
〃(国内線型)
B777-200 P&W PW4074
1,870
1,650
B767-300 GE CF6-80C2B2
1,710
1,420
中型ジェット機
B737-400 CFMI CFM56-3C-1
1,990
1,480
小型ジェット機
注1)数字で見る航空2003(航空振興財団)による。

2)15℃海面上、無風、乾燥路面、勾配なし、最大離陸重量時の通常フラップ角度での値。

3)離陸・着陸滑走路長は滑走路面状態、勾配、運航重量等の条件により変化する。

※1 着陸滑走路長は乾燥路面の場合であり、湿潤路面の場合は概ね15%程度増加する。

図1 成田国際空港におけるディスプレイスド・スレッショールド方式の例

(AIP-JAPANより/一部加工)
 ・デュアル・スレッショールド方式
前述のディスプレイスド・スレッショールド方式は、全ての航空機が同一の接地点となるため、機種によっては着陸滑走路長の不足により対応できない場合がある。
一方、デュアル・スレッショールド方式の場合は、2つの滑走路進入端(接地点)を航空機の規模(必要滑走路長)により使い分けるため、ディスプレイスド・スレッショールド方式に対応できない機種を補うことができる。
しかしながら、当該方式はICAOにおいて正式に認められた方式ではなく、現在、ドイツのフランクフルト・マイン空港で試験的に運用されているのみである(当該空港では滑走路処理能力の向上を目的として実施されている)。また、我が国で実施する場合は、航空法の改正、安全性の検証、管制方式の変更等について検討課題が多い。

・グライドパス角の引き上げ
計器着陸装置(ILS)のグライドパス(ローカライザー(LLZ)とグライドスロープ(GS)により構成される降下経路)の角度を引き上げることにより進入経路下の騒音が軽減されることが考えられる。
現在、横田飛行場には滑走路の両側(36/18)にILSが設置されているが、18側(北側)のグライドパスの角度は3度であることに対し、36側(南側)は2.5度となっている。したがって、これを3度まで上げることができれば騒音軽減効果が期待できると考えられる。

 着実に進み始めています
 平成15年に日米首脳会談で実現可能性についての検討に合意し、18年に在日米軍再編の「ロードマップ」も合意、組織が立ち上がりました。その後、米軍が管理していた基地上空の空域の一部返還が実現しました。これにより、羽田から西方面の飛行時間が若干短縮され燃料とそれに対するCO2削減にもつながっています。

その後新たな展開がなかったものの、24年3月、在日米軍司令本部がある横田基地に、航空自衛隊の航空総隊司令部などが移動し、横田基地は日米両国の共用基地となりました。そして長島総理補佐官(当時)もアメリカ国務省に前もって協力を求めるなど軍民共用化協議の環境整備に向けた取り組みを行い、野田総理は日米首脳会談で、オバマ米大統領に横田基地の軍民共用化の検討を要請し改めて日米両政府間の協議事項としました。

現在、都では当面の要請として、まずはビジネスジェットの就航を求めています。
 横田基地へのアクセス道路の整備も必要
 多摩中央ハイウエイ構想を提唱しています。
この構想は、中央自動車道国立府中インターチェンジ付近から、広域防災基地、横田基地を通り、圏央道青梅インターチェンジの総延長約21Kmを地下で結ぶものです。都道下や大深度地下を活用し、大型車も通行可能な直径13m口径の大型トンネル一本、或いはIT技術を活用し、フランスのA86号線のような規格の、4t車まで通行可能な直径6.6m口径の小型トンネルを二本建設するものです。

この地下自動車専用道路の建設により、軍民共用化に向けた横田基地へのアクセスが確保されると同時に、現在、国立府中インターから青梅インター間の所要時間約70分(平均時速30Km)が30分(時速80Km)と40分も短縮でき、CO2排出量の削減も可能となります。大口径のトンネルについては、走行面下の余剰空間を防災基地における防災機能の向上にも活用できるメリットがあり、また、小口径トンネルについては、我が国のおいては新たなチャレンジとなりますが、建設コストを削減できるメリットとともに、事故発生時の避難用トンネルとしてもう一方のトンネルを活用できることから、防災面でも注目すべきトンネルとなります。
 建設費の想定に関しては、シールドの断面積によって変わってきますが、専門家の話では、先程紹介した大型トンネル一本で堀った場合、用地買収費やシステム費を除き、約3,800億円。また、小型トンネルを二本掘った場合は、約半分の1,800億円とのことです。

平成17年度道路交通センサスから推定すると、中央自動車道の国立付近では毎日約45,000台が通行しており、そのうち、仮に30%程度が利用するだけでも、現状で一日1万台の利用が想定されることから、十分利用度の見込める道路と考えられます。横田基地へのアクセス道路、多摩地域の交通網拡充の一つのアイデアとして、議論を喚起できればと期待しています。

公正・公平な都政運営へ〜情報公開・税のあり方〜

 情報公開の推進と公文書管理の徹底

 小池知事の誕生により、都における情報公開が飛躍的に向上しています。会派として、予てから情報公開の推進はもとより、その前提となる公文書の管理についても求めてきました。

 豊洲問題の真相も、適切な記録、開示が行われなかったため、完全に解明できず、100条委員会の設置にも至っております。

 そこで、情報公開の推進のため、公文書管理条例の制定を、会派として知事に提案したところ「適正な文書管理は、情報公開と相まって、都民の都政参加を進め、行政の説明責任のインフラである。豊洲市場の文書管理問題も受け、文書管理規則を年度内に見直し、29年度早期の条例化検討を指示した」と答弁し、大きく前進することになりました。

 課税ミスをゼロへ~都税事務所をしっかり監視

 公文書管理の徹底は、私が予てから取り組んでいる固定資産税の課税ミス問題にも繋がります。過去、都税事務所はお手盛りで算定根拠書類を破棄していたことがありました。課税の間違いを検証できない状況にあることにメスを入れ、課税ミスによる納税者の不利益を解消、さらに還付加算金は何ら責任のない一般都民の税金から支出されていることから、繰り返し、都の課税ミスを指摘し、是正を求めてきました。4期目の任期中にも主税局に再調査を求めたところ、課税ミスが見つかり、還付手続きをする事態となりました。

 今後とも、公正で公平な課税が徹底されるよう目を光らせて参ります。

 都市部の自治体にとって貴重な財源を脅かす「ふるさと納税」は見直しを

 ふるさと納税はそもそも、自分のふるさとを応援し、貢献する仕組みだとの触れ込みで導入されました。しかし、現状は縁もゆかりもない自治体にも寄付することができ、その目的は高価な返礼品に目が眩んでいるとしか思えない状況です。寄付を受ける側にとっては、寄付額の範囲内の返礼品であれば、実収入が増えるため寄付集めに狂奔していますが、その寄付金は本来他の自治体に入るべき住民税を奪った結果であり決して筋の良いものではありません。

 片山元総務大臣が「ふるさと納税で寄付を集めるために絞る知恵は、振り込め詐欺の連中が絞る知恵に似ている」と東京新聞に投稿していましたが、まさにその通りだと思います。ふるさと納税を利用する住民にとっては一つの生活の知恵かも知れませんが、返礼品目的で自分が住む自治体への納税を減らしている住民へのサービスにも、ふるさと納税を利用しない住民の税金が充当されていることは理不尽です。東京都のふるさと納税による個人住民税の控除額(いわゆる減収額)は、平成27年度には48億5700万円(都民税分19億3400万円、市区町村民税分29億2300万円)であったものが、平
成28年度には261億5700万円(都民税分104億6000万円、市区町村民税分156億9700万円)と5倍以上にもなり、その影響は拡大の一途、29年度見込みではさらに影響額が増えています。

 この事例は、法人住民税の一部国税化と合わせ、国対地方自治体の財源論争を地方自治体間の争いに転嫁したものであり、このような国のやり方は筋が悪く姑息だと思っています。近年では企業版ふるさと納税の導入も検討されています。私としては一日も早く廃止すべきと、東京都の税制調査会でも発言しています。

都内の観光振興

 江戸城再建について
 江戸城寛永度天守(かんえいどてんしゆ)は、都立中央図書館にたった1枚の「建地割図(たてじわりず)」が、遺されているだけで、設計図も絵図もなく、どんな城だったか謎でした。しかし、城郭復元研究の第一人者と言われる広島大学大学院の三浦正幸教授の協力のもと、遺された「建地割図(たてじわりず)から12枚の「復元図」が創作され、それを元にCGが作成され、平成22年6月、その全容が明らかになりました。世界の主要都市には、必ずと言っていいほど偉大なモニュメントがありますが、日本の首都・東京には、世界に誇れる歴史的・文化的シンボルがありません。そこで観光資源として、江戸城再建に向けた取り組みを求めています。